姫路市で建設業許可の申請をお手伝いしていると、「うちは足場屋だから、とび・土工の許可でいいんですよね」というご相談をよくいただきます。実はこの業種、名前から想像するよりもはるかに守備範囲が広く、そのぶん「どの業種で取るべきか」を間違えやすい業種でもあります。
この記事では、とび・土工・コンクリート工事業の許可について、対象になる工事、許可の要件、そして実務でつまずきやすいポイントを、個人事業主や小さな会社の方に向けて整理しました。
とび・土工・コンクリート工事業とはどんな業種か
建設業法上、建設工事は29業種に分けられており、その内容は昭和47年3月8日建設省告示第350号で定められています。とび・土工・コンクリート工事は、この告示で次の5つに分類されています。
イ 足場の組立て、機械器具・建設資材等の重量物のクレーン等による運搬配置、鉄骨等の組立て等を行う工事
ロ くい打ち、くい抜き及び場所打ぐいを行う工事
ハ 土砂等の掘削、盛上げ、締固め等を行う工事
ニ コンクリートにより工作物を築造する工事
ホ その他基礎的ないしは準備的工事
ポイントは最後の「ホ その他基礎的ないしは準備的工事」です。ここが非常に幅広く、他の28業種のどれにも当てはまらない基礎的・準備的な工事の多くが、この業種に流れ込んでくる構造になっています。
具体的にどんな工事が該当するのか
国が示している例示は次のとおりです。ご自身の仕事がどこに入るか、確認してみてください。
イ とび工事、ひき工事、足場等仮設工事、重量物のクレーン等による揚重運搬配置工事、鉄骨組立て工事、コンクリートブロック据付け工事
ロ くい工事、くい打ち工事、くい抜き工事、場所打ぐい工事
ハ 土工事、掘削工事、根切り工事、発破工事、盛土工事
ニ コンクリート工事、コンクリート打設工事、コンクリート圧送工事、プレストレストコンクリート工事
ホ 地すべり防止工事、地盤改良工事、ボーリンググラウト工事、土留め工事、仮締切り工事、吹付け工事、法面保護工事、道路付属物設置工事、屋外広告物設置工事、捨石工事、外構工事、はつり工事、切断穿孔工事、アンカー工事、あと施工アンカー工事、潜水工事
足場屋さん、土工屋さん、生コン圧送屋さんはもちろん、地盤改良、法面工事、外構工事、はつり・コア抜き、あと施工アンカー、ガードレールや道路標識の設置、屋外広告物の設置、潜水作業まで、この一つの業種に含まれます。
意外と知られていない「これも、とび・土工」
上の例示に名前が出てこない工事でも、とび・土工・コンクリート工事として扱われるものがあります。相談の現場でよく話題になるのが次の3つです。
ベタ基礎工事などの建築物の基礎工事
掘削をして、型枠を組み、コンクリートを打設して基礎を築造する工事は、告示でいう「ニ コンクリートにより工作物を築造する工事」に当たります。住宅のベタ基礎工事を専門にされている方は、建築一式ではなく、とび・土工・コンクリート工事業が該当する業種になります。
外構工事
駐車場の土間コンクリート、ブロック積み、境界まわりの造作といった外構工事は、例示にもはっきり「外構工事」と書かれています。エクステリア専門でやっておられる方も、許可を取るならこの業種です。
システムキッチン・システムバス(ユニットバス)の設置工事
意外に思われるかもしれませんが、こうした住宅設備の据付け工事も、とび・土工・コンクリート工事に該当します。工事の主たる内容が「据え付けて、アンカー等で固定する」ことであるためで、告示でいう「ホ その他基礎的ないしは準備的工事」に位置づけられます。この点は、姫路市の申請窓口である中播磨県民局でも同様の取扱いであることを確認しています。あわせて行う給排水の接続や電気の結線は、原則として附帯工事の扱いです。ただし、大規模なリフォームで配管の引き直しそのものが工事の主たる部分になる場合は、管工事と判断されることがあります。
つまり、ご自身では「うちは基礎屋」「うちは外構屋」「うちは水まわりの入替屋」と思っていても、許可の上ではとび・土工・コンクリート工事業になるケースが非常に多い、ということです。
間違えやすい業種の区分
とび・土工・コンクリート工事業でいちばん相談が多いのが、隣の業種との線引きです。国土交通省の建設業許可事務ガイドラインでは、次のように整理されています。
鉄骨工事との区分
鉄骨の製作・加工から現場での組立てまでを一貫して請け負う場合は鋼構造物工事業になります。加工済みの鉄骨を現場で組み立てるだけであれば、とび・土工・コンクリート工事業です。
コンクリートブロックの工事との区分
土木工事における規模の大きいコンクリートブロックの据付けや、プレキャストコンクリートの柱・梁などの部材の設置工事は、とび・土工・コンクリート工事業です。一方、建築物の内外装や法面処理、擁壁として行うブロック積み・張りは石工事業、コンクリートブロックで建築物そのものを建てる工事はタイル・れんが・ブロック工事業になります。
プレストレストコンクリート工事との区分
橋梁など、土木工作物を総合的に建設するプレストレストコンクリート構造物工事は、土木一式工事業に該当します。
吹付け工事との区分
法面処理などのためのモルタル吹付け・種子吹付けは、とび・土工・コンクリート工事業です。建築物に対するモルタル等の吹付けは左官工事業になります。
屋外広告物の工事との区分
現場での製作・加工から設置までを一貫して請け負う場合は鋼構造物工事業、設置のみであればとび・土工・コンクリート工事業です。
防水工事との区分
トンネル防水工事などの土木系の防水工事は、とび・土工・コンクリート工事業に含まれます。防水工事業に該当するのは建築系の防水工事です。
この区分を誤ったまま申請すると、審査の段階で業種の変更を求められ、集めた実務経験の資料が使えなくなることもあります。最初の業種選びは慎重に行ってください。
解体工事は「とび・土工」では請け負えません
これは特に注意していただきたい点です。
平成28年6月1日に「解体工事業」が29番目の業種として新設され、工作物の解体工事はとび・土工・コンクリート工事業から切り離されました。それまでの許可業者向けの経過措置も令和元年5月31日で終了しています。
つまり現在は、とび・土工・コンクリート工事業の許可だけでは、500万円以上の解体工事を請け負うことはできません。解体を業務として行うのであれば、解体工事業の許可を別途取得する必要があります。
なお500万円未満の解体工事であっても、建設リサイクル法に基づく解体工事業者の登録が別に必要です。「軽微な工事だから何もいらない」と誤解されている方が多いところなので、あわせてご確認ください。
どこから許可が必要になるのか
請負金額が500万円未満(税込)の工事は「軽微な建設工事」として、許可がなくても請け負えます。とび・土工・コンクリート工事業には、建築一式工事のような1500万円という例外はありませんので、500万円が唯一の基準です。
ただ実際には、金額に関係なく、元請から「許可がないと入れない」と言われて取得されるケースが非常に多い業種です。足場やくい打ち、圧送、地盤改良などは大手ゼネコンや公共工事の現場に入る機会が多く、下請として選ばれる条件に許可が入っているためです。
許可を取るための要件
一般建設業の知事許可を取る場合、次の要件をすべて満たす必要があります。
1 常勤役員等(旧・経営業務の管理責任者)がいること
建設業の経営経験が原則5年以上ある人が、常勤の役員または個人事業主本人として在籍していることが必要です。
2 営業所技術者(旧・専任技術者)がいること
令和6年12月の建設業法改正により、これまで「専任技術者」と呼ばれていた役職は「営業所技術者」という名称になりました。呼び方が変わっただけで、営業所ごとに技術者を常勤で置くという考え方そのものは変わっていません。要件は次の項目で詳しく説明します。
3 誠実性があること
請負契約に関して不正・不誠実な行為をするおそれが明らかでないこと。
4 財産的基礎があること
自己資本が500万円以上あること、または500万円以上の資金調達能力があること(金融機関の残高証明書などで証明します)。
5 欠格要件に該当しないこと
役員等が過去に許可の取消しを受けている、暴力団関係者である、といった事情がないこと。
6 適切な社会保険に加入していること
健康保険、厚生年金保険、雇用保険への加入が許可の要件になっています。
営業所技術者になれる資格
とび・土工・コンクリート工事業で使える主な資格は次のとおりです。
・1級建設機械施工管理技士
・2級建設機械施工管理技士(第1種から第6種)
・1級土木施工管理技士
・2級土木施工管理技士(土木)
・1級建築施工管理技士
・2級建築施工管理技士(躯体)
・技術士(建設部門、総合技術監理部門のうち建設)
・とび、とび工(技能検定1級)
・とび、とび工(技能検定2級、合格後3年の実務経験が必要)
・型枠施工(技能検定1級)
・型枠施工(技能検定2級、合格後3年の実務経験が必要)
・コンクリート圧送施工(技能検定1級)
・コンクリート圧送施工(技能検定2級、合格後3年の実務経験が必要)
・ウェルポイント施工(技能検定1級)
・ウェルポイント施工(技能検定2級、合格後3年の実務経験が必要)
・地すべり防止工事士
技能検定の2級は、合格後に一定の実務経験が求められる点に注意してください。また2級土木施工管理技士なども、種目や合格時期によって扱いが異なる場合があります。上記以外にも使える資格がありますので、お手元の資格が使えるかどうか判断がつかない場合は、兵庫県の有資格コード一覧で確認するか、当事務所にお問い合わせください。
資格がない場合は実務経験10年
該当する資格がなくても、とび・土工・コンクリート工事に関する10年以上の実務経験があれば営業所技術者になれます。土木工学や建築学などの指定学科を卒業している場合は、高校卒業で5年、大学卒業で3年に短縮されます。
ただ、実務経験ルートで難しいのは「証明」です。10年分の工事を、請求書や請負契約書といった客観的な資料で切れ目なく示す必要があります。とび・土工・コンクリート工事業は一人親方や少人数の会社が多く、古い書類が残っていないことも珍しくありません。
もし今、資料が手元にあるうちに動けるのであれば、その段階でご相談いただくのが安全です。書類を探す作業からお手伝いできます。
一般建設業と特定建設業の区分
元請として工事を受注し、下請に出す金額が一定額以上になる場合は、特定建設業の許可が必要です。この金額要件は令和7年2月1日に引き上げられました。
改正前 4500万円(建築工事は7000万円)
改正後 5000万円(建築工事は8000万円)
とび・土工・コンクリート工事業の場合は5000万円が基準になります。下請専門で仕事をされている場合や、下請に出さない場合は、一般建設業の許可で問題ありません。
なお、とび・土工・コンクリート工事業は指定建設業(土木一式、建築一式、電気、管、鋼構造物、舗装、造園の7業種)には含まれていないため、特定建設業の技術者要件についても、1級資格のほかに指導監督的な実務経験によるルートが認められています。
姫路市で申請する場合の窓口
姫路市内にのみ営業所がある場合は、兵庫県知事許可となり、申請窓口は中播磨県民センター姫路土木事務所建設業課です。申請書類は兵庫県のホームページからダウンロードでき、手引きも公開されています。
ただ、とび・土工・コンクリート工事業は業種の区分が複雑で、実務経験の証明にも手間がかかります。書類を作る前に、そもそもどの業種で申請すべきか、手元の資料で証明できるかを整理しておくことが、遠回りしないコツです。
まとめ
とび・土工・コンクリート工事業は、足場や土工だけでなく、ベタ基礎、外構、地盤改良、法面、はつり、アンカー、道路付属物、さらにはシステムキッチンやシステムバスの設置まで含む、非常に幅広い業種です。そのぶん、鋼構造物工事や石工事、土木一式工事との線引きを誤りやすく、また解体工事が別業種であることを見落としやすい業種でもあります。
行政書士なかお事務所では、姫路市を中心に建設業許可の申請をお手伝いしています。「うちの仕事はどの業種になるのか」「実務経験で許可が取れるか」といった段階からのご相談も歓迎です。お気軽にお問い合わせください。